皮膚科医のお薬/治療解説ブログ

とある皮膚科医が皮膚科疾患の薬や治療についてわかりやすく解説します

【皮膚科医解説】ジフラール/ダイアコート軟膏とデルモベート軟膏の違いは?Strongestだけど副作用が少なめ

今回の記事では、「ジフラール軟膏」と「ダイアコート軟膏」について解説します。

 

フラール軟膏/ダイアコート軟膏とは

フラール軟膏とダイアコート軟膏は、皮膚科の塗り薬のうち「副腎皮質ステロイド薬」に分類されます。

いずれも主成分としてジフロラゾン酢酸エステルが0.05%配合されており、販売する会社が違うだけで基本的に同じ薬です。

ステロイド外用薬」には、皮膚の炎症を強く抑える作用があります。

そのため、湿疹・皮膚炎など炎症性の皮膚疾患によく用いられます。

この「ステロイド外用薬」は作用の強さにより、下記の5つのランクに分けられます。

 

Ⅰ群 Strongest (最強)
Ⅱ群 Very strong (とても強い)
Ⅲ群 Strong (強い)
Ⅳ群 Medium (穏やか)
Ⅴ群 Weak (弱い)

 

フラール軟膏/ダイアコート軟膏は、この中で“最強”のStrongestに該当するお薬です。

 

Ⅰ群 Strongest (最強) ← ジフラール軟膏とダイアコート軟膏はここ!
Ⅱ群 Very strong (とても強い)
Ⅲ群 Strong (強い)
Ⅳ群 Medium (穏やか)
Ⅴ群 Weak (弱い)

 

強力な薬ですので、Ⅱ群以下の塗り薬では効かない“重症”アトピー、虫刺され、乾癬、ケロイド、 円形脱毛症などに用いられます。

患部に塗る回数は、1日に1,2回程度です。

症状が悪化している時期には1日2回、それ以外の時期には1日1回塗るのが良いとされます*1

 

フラール軟膏/ダイアコート軟膏の強さ

フラール軟膏/ダイアコート軟膏の有効性を、同じⅠ群 Strongest(最強)クラスであるデルモベート軟膏と比較した実験があります*2

それによると、

  • フラール軟膏/ダイアコート軟膏の効果は、デルモベート軟膏に劣らない。

という結果でした。

 

デルモベート軟膏は以前に紹介したように、Ⅲ群 Strong(強い)クラスのステロイド外用薬と比較すると、

 

  • フルコート軟膏の18.7倍
  • リンデロンV軟膏の5.2倍

 

という非常に強力な薬です。

したがって、ジフラール軟膏/ダイアコート軟膏も同様に強力な薬だと言うことが出来ます。

hifukai.hatenablog.com

 

ただ、実際に処方している皮膚科医としての実感としては、

 

フラール軟膏/ダイアコート軟膏はデルモベート軟膏よりは効果が弱いんじゃないかなぁ。

 

 

という印象があります。

メーカーによって添加物が変わるので、その影響かもしれませんね。

 

フラール軟膏/ダイアコート軟膏の副作用

フラール軟膏/ダイアコート軟膏で頻度の高い副作用は、

 

  • 毛のう炎/せつ(毛穴の感染症) 0.41%
  • 皮膚萎縮(皮膚が薄くなる) 0.28%
  • ステロイド座瘡(ニキビ) 0.19%

 

です。
また、重篤な副作用としては、白内障緑内障という眼の病気があがっています。

眼の周囲に塗るのは危ないですね。

 

また、ジフラール軟膏/ダイアコート軟膏の副作用の出やすさを、同じⅠ群 Strongest(最強)クラスのデルモベート軟膏と比較した研究があります*3

それによると、

 

フラール軟膏/ダイアコート軟膏はデルモベート軟膏よりも

  • 皮膚が薄くなることが有意に少ない。
  • 皮膚の赤みが透けて見えるようになりにくい。

 

という結果でした。

デルモベート軟膏に比べるとやや安全性は高そうです。

とはいえ強い薬には違いないので、副作用には十分な注意が必要です。

 

原則として妊婦や授乳婦には使用しないことが望ましいとされます。

また、顔などの敏感な部位に塗ったり、子供に塗ったりする際は気をつけないといけません。

皮膚科医の指導に従いながら正しく使用することが大切です。

 

フラール軟膏/ダイアコート軟膏のお値段とジェネリック医薬品

フラール軟膏/ダイアコート軟膏 5gの価格は、3割負担の方の場合でいずれも約24円です。

デルモベート軟膏が約37円なので、ジフラール軟膏/ダイアコート軟膏の方が安いですね。

 

加えて、ジフラール軟膏/ダイアコート軟膏にはジェネリック(後発)医薬品があります。

これを用いると、費用を抑えることが可能です。

3割負担のケースで、ジフラール軟膏とジェネリック医薬品の金額を比較してみましょう。

軟膏5g 1本あたりの金額の目安は、

 

 

「ジフロラゾン酢酸エステル軟膏0.05%「YD」」に変更すると、金額が半分程度で済みます

ただ、塗り薬はジェネリック医薬品の効き目や副作用が先発薬と同じとは限りません。

ジェネリック医薬品が合わない場合は、「ジフラール軟膏」か「ダイアコート軟膏」に戻すのが無難です。

 

フラール軟膏/ダイアコート軟膏の市販薬

フラール軟膏やダイアコート軟膏に相当する市販薬はありません。

副作用が出やすい強いお薬ですから、医師の診察無しには使えないわけですね。

 

まとめ

最後にジフラール軟膏/ダイアコート軟膏についてのまとめです。

効き目の強い良いお薬ですが、副作用に気をつけて使うようにしましょう。

 

  • フラール軟膏/ダイアコート軟膏は“最強”ランクのステロイド外用薬。
  • 重症のアトピー、虫刺されなどによく効く。
  • 皮膚が薄くなる、毛穴の感染症などの副作用が出やすい。
  • デルモベート軟膏よりはやや副作用が出にくそう。
  • お値段は1本約24円。ジェネリックなら約半額。

 

 

 

*1:Green C, et al.  : Br J Dermatol. 2005 ; 152 : 130-141.

*2:水野 惇子:薬理と治療. 1983; 11:5045.

*3:水野 惇子:薬理と治療. 1983; 11:5043.