皮膚科医のお薬/治療解説ブログ

とある皮膚科医が皮膚科疾患の薬や治療についてわかりやすく解説します

【皮膚科医解説】「デルモベート軟膏」は強さ最強のステロイド外用薬!副作用に注意を

今回の記事では、「デルモベート軟膏」について解説します。

 

https://gskpro.com/content/dam/global/hcpportal/ja_JP/products-info/dermovate/dermovate_oni-img-patient.jpg

デルモベート軟膏とは

デルモベート軟膏は、皮膚科の塗り薬のうち「副腎皮質ステロイド薬」に分類されます。

ステロイド外用薬」には、皮膚の炎症を強く抑える作用があります。

そのため、湿疹・皮膚炎など炎症性の皮膚疾患によく用いられます。

この「ステロイド外用薬」は作用の強さにより、下記の5つのランクに分けられます。

 

Ⅰ群 Strongest (最強)
Ⅱ群 Very strong (とても強い)
Ⅲ群 Strong (強い)
Ⅳ群 Medium (穏やか)
Ⅴ群 Weak (弱い)

 

デルモベート軟膏は、この中で“最強”のStrongestに該当するお薬です。

 

Ⅰ群 Strongest (最強) ← デルモベート軟膏はここ!
Ⅱ群 Very strong (とても強い)
Ⅲ群 Strong (強い)
Ⅳ群 Medium (穏やか)
Ⅴ群 Weak (弱い)

 

強力な薬ですので、Ⅱ群以下の塗り薬では効かない“重症”アトピー、虫刺され、乾癬、ケロイド、 円形脱毛症などに用いられます。

患部に塗る回数は、1日に1,2回程度です。

症状が悪化している時期には1日2回、それ以外の時期には1日1回塗るのが良いとされます*1

 

デルモベート軟膏の強さ

デルモベート軟膏の強さを、Ⅲ群 Strong(強い)クラスのステロイド軟膏と比較した実験があります*2
それによると、デルモベート軟膏の効果は

  • フルコート軟膏の18.7倍
  • リンデロンV軟膏の5.2倍

です。とても強い作用があると言えます。

 

また、デルモベート軟膏の有効性を、同じⅠ群 Strongest(最強)クラスであるジフラール軟膏と比較した実験があります*3

それによると、

  • デルモベート軟膏とジフラール軟膏の効果に差はない。

という結果でした。

ただ、実際に処方している皮膚科医としての実感としては、

 

デルモベート軟膏はすべてのステロイド外用薬の中で一番効くんじゃないかなぁ。

 

という印象があります。

そのためか、Strongestランクのステロイド外用薬の中で最も売れているのは、このデルモベート軟膏です。

 

デルモベート軟膏の副作用

デルモベート軟膏で頻度の高い副作用は、

 

  • 皮膚萎縮(皮膚が薄くなる) 1.0%
  • 毛のう炎/せつ(毛穴の感染症) 0.6%
  • 毛細血管拡張(血管が皮膚から透けて見える) 0.5%

 

です。
また、重篤な副作用としては、白内障緑内障という眼の病気があがっています。

眼の周囲に塗るのは危ないですね。

 

また、デルモベート軟膏の副作用の出やすさを、同じⅠ群 Strongest(最強)クラスのジフラール軟膏と比較した研究があります*4

それによると、

 

デルモベート軟膏はジフラール軟膏よりも

  • 皮膚が有意に薄くなりやすい。
  • 皮膚の赤みが透けて見えやすい。

 

という結果でした。

副作用には十分な注意が必要です。

 

デルモベート軟膏の注意点

デルモベート軟膏は強い薬であるだけに、国内外でいくつか注意喚起が出されています。
主なものをまとめると、

 

  • 治療は4週間を超えて継続しないこと。
  • 1週間の最大投与量は50gを超えないこと。
  • 小児への投与は極力5日以内にとどめること。
  • 顔面への使用は極力5日以内にとどめること。
  • 妊婦に対しては使用しないことが望ましい。

 

もちろんこれらは原則であり、例外もあります。

皮膚科医の指導に従いながら正しく使用しましょう。

自己判断で顔に塗ったり子供に塗ったりはしないでください。

 

デルモベート軟膏のお値段とジェネリック医薬品

デルモベート軟膏 5gの価格は、3割負担の方の場合で約37円です。

また、デルモベート軟膏にはジェネリック(後発)医薬品があります。

これを用いると、費用を抑えることが可能です。

3割負担のケースで、デルモベート軟膏とジェネリック医薬品の金額を比較してみましょう。

軟膏5g 1本あたりの金額の目安は、

 

  • デルモベート軟膏(GSK)  37円
  • ソルベガ軟膏(久光)  31円
  • デルトピカ軟膏(岩城) 14円
  • マイアロン軟膏(前田) 14円
  • グリジール軟膏(佐藤) 14円
  • マハディ軟膏(東光) 14円
  • デルスパート軟膏(佐藤) 14円
  • クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏0.05%「タイヨー」 14円

 

「デルトピカ軟膏」や「マイアロン軟膏」に変更すると、金額が半分程度で済みます。ただ、塗り薬はジェネリック医薬品の効き目や副作用が先発薬と同じとは限りません。ジェネリック医薬品が合わない場合は、「デルモベート軟膏」に戻すのが無難です。

 (デルトピカ軟膏について詳しく知りたい方はこちら↓)

hifukai.hatenablog.com

 

デルモベート軟膏の市販薬

デルモベート軟膏に相当するような市販薬はありません。

副作用が出やすい強いお薬ですから、医師の診察無しには使えないわけですね。

 

まとめ

最後にデルモベート軟膏についてのまとめです。

効き目の強い良いお薬ですが、副作用に気をつけて使うようにしましょう。

 

  • デルモベート軟膏は“最強”ランクのステロイド外用薬。
  • 重症のアトピー、虫刺されなどに非常によく効く。
  • 皮膚が薄くなる、赤く見えるなどの副作用が出やすい。
  • お値段は1本約37円。ジェネリックなら半額以下。

 

 

 

*1:Green C, et al.  : Br J Dermatol. 2005 ; 152 : 130-141.

*2:Munro DD,et al.:Br Med J. 1975;3:626.

*3:水野 惇子:薬理と治療. 1983; 11:5045.

*4:水野 惇子:薬理と治療. 1983; 11:5043.